桐生・大川美術館へ
Sep
2020
19

最後の夏日の昨日、姉夫婦と群馬県桐生市の「大川美術館」へ行ってきました。

桐生は篠原涼子が観光大使をつとめる「織物の町」として有名です。

関越、北関東自動車道を走って着いた桐生市。まずは腹ごしらえと、桐生のソウルフード「ひもかわうどん」のお店、「藤屋」さんに。
よほど有名なのか、開店時間前から駐車場もいっぱい。名前を記入して開店時間まで待ちました。


やっと開店!


注文したのは普通のうどんに+100円のこれ。

太くてモチモチの冷たい麺を温かいカレーにつけて食べます。
つるんとのどごしも良くて満足でした!


さてこの日の目的、大川美術館では桐生市出身のテキスタイル作家・新井淳一氏の作品展示会が9/27(日)迄ということを朝日新聞の記事で知って、是非行ってみたいと思ったことが姉と一致して叶いました。

姉は美大で工芸の勉強をしていましたから当然、氏のことは知っていましたが、私が何故、彼を知っているのかといえば、結局「305」に行き着きます。

スタッフだった一人の知り合いで色々な生地の収集家で、毎年のようにインドネシアのバリに行っては気に入った生地を買いつけてくる方がいらっしゃいました。「305」のイベントでもよく生地を提供してくださいました。タイの織物とか、バリの更紗とか。
確かその方から新井淳一さんというお名前を伺っていたのだと思います。

桐生市内から細い道をくねくね登った山の中腹に大川美術館はありました。
車が曲がろうとしている右を登ったところが駐車場です。

平屋に見えますが、入ると階段を下りながら小さな展示室がたくさんあります。道路に面したこの入り口は4Fになるそうです。

駐車場から見た全容。


現在の企画展示は「テキスタイル・プランナー新井淳一の仕事」です。
この看板の「大川美術館」の揮毫も新井淳一氏のものだそうです。

ゆかりの画家、松本竣介、野田英夫の作品や、ピカソ、ルオー、ベンシャーンらの西洋絵画の作品がらせん階段を下りながら迷路のように各部屋に展示され、一体いつになったら「新井淳一の仕事」が見られるの・・・というくらい、じらされた展示会場でした。



新井淳一のテキスタイルはフラッシュ無しなら撮影OKでしたので、スマホに収めてきました。
「アフリカ絞り模様」というジャガード織物です。
一見、絞り生地だと見まがうような布でした。



これは「ケンテクロス」という西アフリカの伝統的織物です。織機が15センチ程度の幅までしか織れないのでそれらをつなぎ合わせて大きな布を作るそうです。
これはつなぎ合わせる前のものです。


そしてこの「綿強撚糸空き羽ジャガード織物/ケンテクロス格子模様」は ↑ の伝統織物にインスピレーションを受けた新井淳一の作品だそうです。



これは ↑ の「空き羽ジャガード織物」の布をコピー機の上に乗せて複写し、複写したものをさらに複写する、という形で何度も複写を繰り返し、さらにその図像をコンピューター処理して、ジャガード織機で布の「模様」として織りだしたのがこの「布目柄」というテキスタイルです(ハァ~複雑!!)。
氏のテキスタイルはイッセイミヤケやコムデギャルソンの川久保玲や山本寛斎らと数多くコラボレーションしているそうですが、これを見た三宅一生氏は「僕はこの布で服は作れない。これは布だけで完成していると思う」と言ったそうです。


ジャガード四重織りショール 
表:ドット  裏:ストライプ

アクリル・ウール四重織りショール
表:黒地青ドット
裏:格子

これらは見たことがあるような気がします。
イッセイミヤケなどでストールとして売っていたのではないでしょうか。




これはウールの縮む力「フェルト化」という現象を取り入れた作品です。


これを見て昔、買った北欧のマフラーを思い出しました。
でも出して広げてみるとちょっと違ってました!
経糸は均一ですが緯糸はフェルト化した糸のようです。
これはこれで不思議な織物です。


上:クラッシュ加工ポリエステル シルバーメタリック織物
下:転写捺染クラッシュプリーツ加工 メタリック織物



メルトオフ・プリーツ・メタリック織物「オーホ・デ・ディオス」
これはイッセイミヤケに提供したのかな?



渦巻き模様 銀メタリックレース
なんか壮大な宇宙をも感じます!!


今朝、「チコちゃんに叱られる」の再放送で「人はなぜ数学を勉強するか」という質問がありました。
確かに、足し算、引き算の算数は必要不可欠のものですけど、因数分解だのsin,cos,tanなどの三角関数などは何に役立っているのか??

回答は「論理的な思考が身につくから」だそうです。

つまり新井淳一という人もかなりの数学力があったのかな~と思った次第です。

あんな複雑な織物を仕立て上げちゃうんですから!
もちろん、数学的だけではなく、化学の知識も技術も必要ですね!!

プロフェッショナルとはこういう人を言うんだな~と感慨新たな一日でした。